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漫画とポップカルチャーが大好きな中学14年生です。2010年のインターネットから帰ってこれません。

帰省

うちの家族は年末年始を祖父の家で過ごす。

 

祖父の家は大阪にあって、私も生まれだけは兵庫。

関東に越してきたのは物心つく前で、当時0歳だった私は阪神淡路大震災で被災した。

大阪に住むのは母方の祖父母で、祖母は既に他界してる。

 

祖母は8年間の入院生活を経て亡くなった。

脊髄小脳変性症という病気で、1リットルの涙という書籍に出てくる主人公(ドラマでは沢尻エリカが演じてたもの)と同じらしい。

 

脊髄小脳変性症 - Wikipedia

脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう、英:Spinocerebellar Degeneration (SCD))は、運動失調を主な症状とする神経疾患の総称である。小脳および脳幹から脊髄にかけての神経細胞が徐々に破壊、消失していく病気であり、1976年10月1日以降、特定疾患に16番目の疾患として認定されている。また、介護保険における特定疾病でもある。

 

 

で。

今現在は祖父が一人で住んでいるマンションで

近くに住む従兄弟やらを交えての年越しをするのが鉄則となっている…。

 

私は中学受験をしたので、その年の冬休みには帰省しなかったものの

それを除くと全ての年越しを大阪でしていて

学生時代は春休み、夏休みにも帰省。

今ではお盆に帰省していて、大阪はもはや私にとって第2の故郷とも言える。

 

しかし…

祖父の家が楽しいわけがない。

今では要介護認定を受けた祖父。

ケアマネージャーさんが手伝ってくれるが、2~3日に1回は病院へ人工透析を受けに行く日々。

正直、私は辛い人工透析にお金を払ってまで生きたいっていうのが全くわからない。

祖父はまさしく金持ち世代にドンピシャであり、長寿、発展、国。明るい日本を築き上げてきた人たちであった。

将来の夢が“50歳までに尊厳死である私とえらい違いである。

 

特に何をすることもない、埃の積もったマンションにわざわざ交通費と時間をかけて荷造りして行き、老人の尿レベルにしか出ない風呂のシャワーを浴び、ハウスダストまみれの布団で顔中湿疹だらけになることにメリットは1つもなかった。

友達同士で年越しをする周りが羨ましくて仕方なかった。

PCも使わないから、未だにWi-Fiも通ってない。

周りに娯楽施設もなく、行こうにも混雑しているわ駅まで坂道徒歩20分だわで、蝉取りしかしなかった。

夏休みに流れる再放送のぬ~べ~だけが救いだった。

 

先に書いたように祖父は元気とは言い難く、会うと必ず『来年には死んでる』と言ってくる。

かれこれ10年それを聞いてきた言葉だし、もう慣れてきつつあるものの

最近の祖父の衰弱加減にはリアリティが勝り、周りも覚悟を決めるようになってきた。

 

祖父は入れ歯だ。

小さい頃から祖父の入れ歯が気持ち悪すぎた。

祖父も祖父で出した入れ歯をこっちに持ってくるからぎゃあぎゃあ言いながら逃げてきた。

一度、祖父と車で山奥にいる祖母のお見舞いに行った時に祖父が入れ歯を忘れたことがあった。

『すまん、持ってきてほしい』

地獄だった。

半泣きの状態でマンションに戻り、母がビニール袋に入れた入れ歯を差し出す。

サンキュー…

スーパーの袋詰めコーナーにある、あの透明なビニール袋が入れ歯を隠すわけもなく結び目をつまんで車に戻った。

 

そんな祖父の入れ歯を貰ったことがある。

この前ネックレスやら指輪を整理していた時にその入れ歯が出てきて笑った。

そのうちピアスにするつもり。

 

祖父は音楽が好きで、昔バイオリンを弾いていたらしいがそれは定かではない。

有名だと言って譲り受けたバイオリンも偽物だったしね。

ただ、音楽が好きなのは本当で、演歌やらジャズやら、あと矢沢永吉が大好きだった。私は好きではない。

ジャズに関しては、私が高校時代にジャズ部を作ったのもあり熱心に教えてくれた。

まあ、あのジャズ部はほとんどお遊びだったし、翌年には高校を辞めているので誇れたものではなかったものの

共通の話題で盛り上がれることに喜びを感じる祖父を、見ていて嫌な気はしなかった。

神戸のジャスフェスティバルに連れていってくれたり、大量のメモ書き付きのCDをくれたり、ドラムを買ってもらったり、ここには色んな思い出がある。

 

そういえば、免許を取ったあとに祖父とドライブデートをした。

孫に乗せられる車はどうだと意気込んだはいいが、めちゃくちゃな運転に祖父もたじろいでいた。

あんなに持ち手に掴まって助手席に乗る老人見たことない。

 

このマンションのシャワーは老人の尿だ。

勢いのないチョロチョロとした冷たい水。

ガスは手で回すタイプで、まさに風呂釜。

テレビは壊れてエアコンも効かない。

ひび割れた壁紙、取れたドアノブ。

埃の積もったタンス、使われない乾燥機。

全て『もう死ぬからええねん』と祖父が言い続け、交換しないままここまで来た。

 

カビ臭い風呂ははだか電球で、換気扇はガムテープで補強されている。

慣れさせられていなければ絶対に耐えられない狂った環境の風呂…。

そんな事を思いつつ、体育座りで銀色の湯船に浸かる。

 

メリットのシャンプー。

ずっと昔からメリットだったな。

小さい頃に、祖父とお風呂に入ったことを思い出した。

当時一緒に見ていた“はぐれ刑事純情派”の主題歌を歌った。

椅子に座らされ、泡立てられた髪の毛。

メリットのシャンプーの香り。

段々と祖父は一緒に入るのがしんどいと言って、毎日入ることもなくなった。

まあそうだよね。超子どもを風呂で毎日相手するのはきついわ。

 

あれからたくさんの年月が経ったなと、年の瀬に思う風呂でした。ちゃんちゃん。


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